官能小説「元カノは人妻だった」を始めます
まずは「1章:再会の夜」です。
まずはエッチシーン少な目ですがご了承くださいまし。
1章:再会の夜
四月の夕暮れ、仕事帰りの健太は、駅前のコンビニで缶コーヒーを買った帰り道、ふと見覚えのある後ろ姿に目を止めた。
肩まで伸びた栗色の髪、細身のデニムに淡いピンクのカーディガン。どこか懐かしい雰囲気が漂っている。
「……由梨?」
思わず声をかけると、彼女がゆっくり振り向いた。
「えっ……健太? 久しぶり!」
驚いたように目を丸くして、でもすぐに柔らかく微笑む。
高校時代の面影がそのまま残っていて、でもどこか大人っぽくなっていた。
「何年ぶりだろうな、元気だった?」
「うん、まあね。健太くんは?」
「俺もなんとかやってるよ。地元の会社に就職して、今もここで暮らしてる」
「そっか。やっぱり変わらないね、健太くんは」
少し照れくさそうに笑う由梨。
健太の胸の奥が、懐かしい痛みでじわりと熱くなる。
高校卒業と同時に東京へ行った彼女。SNSで「結婚しました」の投稿を見てからは、もう会うこともないと思っていた。
「由梨は……東京じゃなかったっけ?」
「うん、でもいろいろあってね。今は実家に戻ってるの」
「そうなんだ……」
「健太くん、今時間ある? ちょっとだけお茶しない?」
駅前のカフェに入ると、窓際の席で向かい合う。
由梨はカフェラテ、健太はアイスコーヒー。
「懐かしいね、こうやって話すの」
「ほんとだな。高校の頃、よく放課後にファミレスでダベってたよな」
「うん、あの頃は何も考えずに笑ってばっかりだった」
由梨はカップを両手で包みながら、ふっと目を伏せた。
「実は……私、離婚したんだ」
「えっ……」
「去年の秋。いろいろあってさ。向こうの仕事が忙しくなって、すれ違いが増えて……私も、なんか疲れちゃって」
「そっか……大変だったな」
「うん。でも今は、なんだかホッとしてる。地元の空気、やっぱり落ち着くし」
健太は、由梨の横顔をじっと見つめる。
あの頃よりも少しだけ痩せて、でもどこか柔らかくなった雰囲気。
薬指には指輪の跡がうっすら残っているのが見えた。
「健太くんは、彼女とかいないの?」
「いや、今はフリー。仕事ばっかりで、全然出会いもなくてさ」
「ふふ、なんか安心した」
「え?」
「ううん、なんでもない」
由梨は小さく笑って、ストローの袋を指先でくるくる丸める。
その仕草が妙に色っぽく見えて、健太は思わず目をそらした。
「また会ってくれる?」
「え?」
「せっかく地元戻ってきたし、昔みたいにさ。……ダメかな?」
「いや、全然。むしろ嬉しいよ」
「じゃあ、今度ご飯でも行こうよ」
カフェを出ると、すっかり夜になっていた。
駅前のネオンが二人の影を長く伸ばす。
「じゃあ、また連絡するね」
「うん、待ってる」
由梨は軽く手を振って、改札へと消えていく。
健太はしばらくその背中を見送っていた。
胸の奥がじんわり熱くなり、懐かしいような、切ないような気持ちが込み上げてくる。
――まさか、また会えるなんて。
スマホを取り出して、由梨からのLINEを確認する。
「今日はありがとう!また連絡するね」
その短いメッセージが、やけに嬉しかった。
健太は夜風に吹かれながら、ゆっくりと家路についた。
心の中で、何かが静かに動き始めているのを感じながら――。

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